結婚情報・結婚相談業サービスやカウンセラーの信頼性向上を目指します。

活動紹介

事務局長対談シリーズ( 財団法人日本青年館結婚相談所 板本洋子所長)

 第4回目の対談は、財団法人日本青年館結婚相談所の所長で、JLCAの理事を務めていただいている板本洋子氏をゲストにお招きし、お話を伺いました。
板本所長は、財団法人という公益的な立場で青年問題に携わる中で、都会の若者の結婚はもちろんですが、特に農村の嫁不足問題に代表される地方の未婚化・晩婚化問題に取り組んでおられ、この分野での第一人者です。
また、政府や地方自治体が主催する各種委員を務められるほか、国内外での講演経験も豊富で、原口事務局長が経済産業省に在職していた際に担当した「少子化時代の結婚産業の在り方に関する研究会」でも委員として、地方の未婚化・晩婚化問題について活発な発言をされておられます。


【原口事務局長】 経済産業省の研究会でも、本当にお世話になりましたが、JLCAの活動でも引き続きご指導をよろしくお願いいたします。

【板本所長】 こちらこそお世話になります。未婚化・晩婚化の問題は、正面から取り上げるとなかなか難しい問題だとは思いますが、様々な形のパートナーシップの在り方を認めることが大切だと思います。また、メディアでの未婚化・晩婚化の議論は、都市部の視点だけで考えられてしまう傾向があるように思いますが、もっと地方や農村など、都市とは異なる状況の中で、若者が抱えている問題や社会的な事情からの視点も重要だと思います。農業問題、雇用事情、過疎など厳しい課題が山積する中で、どんな希望がもてるのか、みなさんにも応援してもらいたいですね。

【原口】 ぜひ、ご協力お願いいたします。これまでの、板本さんのお取り組みについて、改めてご紹介いただけますでしょうか。

財団法人日本青年館結婚相談所 板本洋子所長 【板本】 私の所属する日本青年館は社会教育関連施設であり、財団法人という公益的な立場から、若者問題に関わっています。結婚相談所事業もそこを基本にして展開してきました。「結婚」も、成婚だけを目的にするのではなく、若者や女性の生き方や、地域の活性化という視点から捉えるように努めてきました。
「農村の嫁不足」という問題も、今や「少子化」という言葉にかわり、若者人口確保の手段として結婚支援が自治体においても活発に実施されています。私にとっても、これは大きな問題意識の1つですが、結婚はあくまで生き方の選択であり、多様なライフスタイル、多様な生き方の支援という問題意識に基づいて、様々なセミナーやイベントを開催しています。


【原口】 男女の役割や、性というものを正面から捉えるという視点は、農村の青年たちとの交流がきっかけなのでしょうか。

【板本】 いいえ。日本青年館結婚相談所を訪れる首都圏の若い世代、特に男性と接する中で感じた疑問や問題意識が原点にあります。男性たちは、女性との結婚観のズレを感じつつ、女性との人間関係が不得手だという悩みを抱えていました。これを技術的に訓練する方法もありますが、私たちは、30代独身男性のインタビューを実施し、問題点を把握しました。その上で把握したテーマに基づいた講座・ワークショップを通じて、男性たちにパートナーシップの重要性に気付いてもらいたいと考えました。
【原口】 価値観を押し付けるのではなく、自発的な気付きを持ってもらうというお取り組みについては、ご著書(「追って追われて結婚探し」(新日本出版社))でも触れられてますね。

【板本】 男性を責めない、また、女性に対する理解を押し付けない、ということが基本的なスタンスです。あくまで、男性の生き方、仕事に追われてしまっているライフスタイルといった、「縛り」があることに気付いて欲しいと考えました。そのような理解をしなければ、男女の対等な生き方を実現するのは、不可能だと思いました。また、講座・ワークショップでは、性の問題にも取り組みました。この問題は難しいのですが、専門家のアドバイスも受けながら、敢えてタブーな問題にも挑戦しました。

【原口】 日本青年館の、若者たち一人一人に声をかけていく草の根的な活動は、本当にご苦労も多かったかと思うのですが、地方自治体を巻き込んだ活動は行わなかったのですか。

【板本】 1986年からは、地方自治体の担当者や農村の関係者を集めて、結婚支援の現状と課題への対応を話し合う「全国結婚研究会議」を開催してきています。各地域の独身者支援事業に関する報告会や、行政関係者や有識者によるシンポジウムのほか、独身者のためのワークショップも併設されています。今年も2月に開催しましたが、もう21年も継続されている事業です。
過疎に悩む農村では、長年にわたり結婚支援事業を行ってきました。今では、全国の自治体の50%が結婚支援を行っています。結婚に関することはプライバシーに関わることであることですから、こうした取り組みを行政が行うことに対して賛否もあります。
日本青年館結婚相談所は、こうした問題を考え、共有し、各地の活動から学ぶ拠点として、事業に携わっている行政担当者の悩みや不安に応えてきました。全国結婚研究会議は、こうした問題を共有する場になっています。

【原口】 地方自治体の結婚支援事業の中には、成果を上げているものもあるのではないでしょうか。 坂本所長と原口事務局長

【板本】 成婚数という視点からみれば、費用対効果という側面からも、なかなかうまくいかないことが多いようです。しかし、地域の活性化と結婚支援の両方を視野に入れているようなケースの中には、成功しているものもあります。
今年の全国結婚研究会議でも、年間を通じて都会の女性に農業体験をしてもらうという事例の報告がありましたが、農業は女性に敬遠されていると思い込んでいた男性たちが、女性が熱心に農作業に取り組んでいるのを見て、自信を持つことが出来たそうです。また、グリーンツーリズム企画とセットにした出会い事業の報告もあったのですが、これも参加した女性たちからは、好意的な評価を得ていたようです。


【原口】 ライフデザインカウンセラー資格は、地方でそのような取り組みの中心となっているカウンセラーの皆さんにもぜひ受講していただき、スキルアップして更に活躍していただけるような内容にしなければなりませんね。

【板本】 そうですね。この場合、JLCAがどのようなプログラムを準備できるかが重要です。男女の関係だけでなく、地域の展望、雇用、また、女性の自立支援などといったテーマについても視野に入れることが、行政の担当者や、結婚支援事業に取り組んでいる相談員の方々が求めている内容です。その上で、「人生設計」を意味する「ライフデザイン」、つまり、どのように生きていくかという観点からも、アドバイスをすることができる人材の育成が期待されますね。

【原口】 なるほど。いつも本当に勉強になります。今後ともご指導よろしくお願いいたします。今日はお忙しいところありがとうございました。

【板本】 ありがとうございました。