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活動紹介

事務局長対談シリーズ(佐藤博樹東京大学社会科学研究所教授)

 第2回目の対談は、東京大学社会科学研究所教授で、JLCAの副理事長を務めていただいている佐藤博樹先生をゲストにお招きし、お話を伺いました。
 佐藤先生は、政府が主催する「子どもと家族を応援する日本重点戦略検討会議」をはじめとする政府の少子化関係の委員を歴任されている他、原口事務局長が経済産業省に在職していた際に担当した「少子化時代の結婚産業の在り方に関する研究会」でも座長を務めておられました。
【原口事務局長】 今日は、ライフデザインカウンセラーのテキストのご相談もあわせてお邪魔いたしました。佐藤博樹東京大学社会科学研究所教授

【佐藤教授】 進捗はいかがですか。経済産業省の研究会(※上述の『少子化時代の結婚産業の在り方に関する研究会』のこと)でも、結婚情報サービス業で働く人々の資格制度についての議論をしましたが、単に結婚の相談をする『マリッジ』カウンセラーではなく、結婚から更に広がる人生設計の相談相手となる『ライフデザイン』カウンセラーというのは、今後ますます重要になると考えています。

【原口事務局長】 ファイナンシャルプランナーにお金のことを相談するように、結婚などライフデザインについてもプロフェッショナに相談するというようなことも考えられるでしょうか。

【佐藤教授】 そうですね。お金についてはファイナンシャルプランナーですし、仕事についてはキャリアカウンセラーもありますね。お金や仕事に関する相談のプロフェッショナルはこれまでも育成されてきているのですが、結婚などライフデザインに関するプロフェッショナルというのは資格として確立されたものはまだないと思います。

【原口事務局長】 結婚のプロフェッショナルというと、いわゆる仲人や、結婚情報サービスでカウンセラーという人たちがイメージされますが。

【佐藤教授】 確かにそういう職業の人たちは、結婚に関する情報に精通していますね。もちろん、そういう方々にもぜひこの資格を取得してもらって、更なるスキルアップを図って欲しいと思います。ただ、私は、ライフデザインカウンセラー資格を、企業の人事担当者や自治体の担当者を含め地域で様々な社会活動を担っている人たちにも取得して欲しいと考えています。

【原口事務局長】 そういう人たちにとって、ライフデザインカウンセラー資格はどのように活用されることになりますか。

【佐藤教授】 企業の人事担当者は従業員のキャリア形成支援を考える際に、仕事だけでなく、結婚などライフデザインを含めて考える必要があると感じているようです。結婚を希望する社員がパートナーに出会えて結婚に至ることは、社員の仕事上の意欲にもプラスに影響すると考えているようです。また、結婚後の仕事と家庭・育児の両立支援としてのワーク・ライフ・バランスは、社員が意欲的に仕事に取り組むことができるための、基本的な労働条件になっています。このように、企業にとってもキャリア形成支援だけでなく、社員のライフデザイン支援が大事な課題だと考えられてきています。

佐藤博樹東京大学社会科学研究所教授【原口事務局長】 地域における社会活動の担い手というのは、具体的にはどのようなイメージですか?

【佐藤教授】 日本の婚姻数減少の背景には、いわゆる『お見合い』婚の減少があるといわれています。地域社会や親族関係における相互サポートの仕組みが弱まったことも一因ですね。今、地域には退職して時間的に余裕のある方々が増えてきていますし、これから大量退職時代を迎える中で、何か地域社会のために役に立ちたいと考える方々が増えていくと思います。こういう人たちの中には、地域で様々な社会活動に参加したり、新しい活動を立ち上げたりする方が増えていくとでしょう。そのなかで、ぜひ若い人たちがパートナーに出会える機会となるような社会活動にも目を向けていただきたいと考えています。

【原口事務局長】 新入社員に対するライフデザイン支援ついてはいかがですか。

【佐藤教授】 もちろん就職が決まったばかりの方々に、『さぁ、次は結婚のことを考えましょう』と言っても、びっくりしてしまいますよね(笑)。しかし、キャリア形成を考えていく中で、結婚をどのタイミングでするのか、結婚と仕事、子育てなどの調和をどのように考えていけばいいのか、というようなことに関して知識を持っておくことは大切なことだと思います。また、自己が持っている社内外の人的ネットワークを再確認することも必要ですね。同性を含めて人的な交流がなくては、異性とも出会うことができません。当然のことですが、結婚したいと考えているだけでは、パートナーとは出会えないのです。しかし、この点が十分に理解されていないことがあります。結婚を目的とする必要はないのですが、社内外の様々な人的なネットワークを大事にすることが、仕事上を含めて重要な時代なのです。そういう点にも役に立つようなテキストを仕上げてください。

【原口事務局長】 は、はい。がんばります(汗)。 ところで、最近の政府の少子化に対する議論はどのような方向で進んでいますか。

【佐藤教授】 最近の議論で特筆すべきは、『出生等に対する希望を反映した人口試算』に基づいて議論がなされていることです。これは、『仮に、結婚することを希望する人が全て結婚して、子供を生むことを希望する人が全て出産したら、出生率はどうなるのか。』というもので、この試算によると2055年の合計特殊出生率は1.26から最大で1.75に上昇する可能性があるとされています。

【原口事務局長】 私が、経済産業省で少子化政策を担当していたときは、「出産」や「子育て」に関する政策が多かったのですが、「出会い」や「結婚」、「パートナー」に関する議論が増えてくる可能性がありそうですね。

佐藤博樹東京大学社会科学研究所教授【佐藤教授】 そうですね。未婚化・晩婚化の要因については、これまでも様々な研究・調査がなされておりますが、上述の試算においては、若年層における未婚化の要因について、『人間関係構築力や社会的なサポート資源の不足が重要な要因ではないか』という記述があります。

【原口事務局長】 ここに書いてある「社会的なサポート資源」というのが、ライフデザインカウンセラーに期待される役割ということでしょうか。

【佐藤教授】 ライフデザインカウンセラーもそのひとつです。サポーターは色々なところにいるほうがよいでしょうから、仲人さんや結婚情報サービスのカウンセラーだけでなく、より多くの人たちに受講していただき、資格を取得してもらいたいものです。

【原口事務局長】 テキストでは、結婚に関する知識だけでなく、専門的なカウンセリングスキルについても学習できるように工夫するつもりです。

【佐藤教授】 必要があれば、専門家や有識者を紹介しますから、いつでもおっしゃってください。

【原口事務局長】 ありがとうございます。今後ともご指導よろしくお願いいたします。今日はお忙しいところありがとうございました。

【佐藤教授】 ありがとうございました。